平成二十四年二月三日

その日 海が割れた






「明日、ハレの日」完結編

2012年5月27日(日)、第9回博麗神社例大祭「M19b」・ケロちゃんプロジェクト2016にて頒布予定。

B5 オフセットフルカラー20ページ 500円(税込)を予定。

射命丸文の残念なコスプレの人が、でかふもれいむを抱いて全国を旅する壮大なプロジェクト、「ケロちゃんプロジェクト」の活動の一環として発行してきた同人誌。その 「明日、ハレの日」シリーズの完結編として、この度念願の「明日、ハレの日4〜神が歩かれた御神渡り編」を発表できる運びとなりました。ここまで応援して下さった皆様方に、篤くお礼申し上げます。

 第一部では諏訪の歴史と現地の案内を、続く第二部では七年毎の奇祭「御柱祭」を、そして第三部では地域のおんばしらである「小宮御柱祭」を取り上げ、諏訪信仰のおおまかな流れを三部作で完結出来ました。でも唯一つだけ心残りがあって、それは厳寒期の諏訪湖に発生する「御神渡り」。御柱のように七年毎の決まった日にちに行われるものならともかく、自然現象が相手ではなかなか取材もままならない。しかも近年は暖冬続きで、御神渡りどころか諏訪湖が全面結氷しない「明けの海(あけのうみ)」が多くなってきました。2010年の冬は全くの空振りに終わり、続く2011年は1月17日に諏訪湖が全面結氷し3年ぶりの御神渡り出現が期待されたにも関わらず、その後暖気が入り氷はそのまま溶けてしまいました。

ここで「御神渡り」の原理をざっと説明しますと、冬季に氷点下10℃近くの寒波が続くと諏訪湖は全面氷結し、氷の厚さが約10cmまで成長するといよいよ御神渡り出現のチャンスとなります。夜間から明け方に気温が下がると湖面の氷は収縮し、そして日中気温が上がると膨張します。こうして湖面に圧力がかかり続けると、突如大音響とともに湖面の氷に直線状の亀裂が入り、そこに氷の下の水が入り込んで、新たな氷を形成します。その状態で更に湖面の氷が膨張、収縮を繰り返せば、新しい氷は湖面の上に次々と押し出されるかたちとなり、やがて人間の背丈くらいに成長していきます。これが神が歩かれた奇跡「御神渡り」の原理です。

そして三度目の正直である2012年。今年も正月明けから氷点下10℃近くの厳しい寒波が続き、1月27日金曜日には諏訪湖が二年続けて全面結氷。しかし御神渡りが出現するには氷点下10℃以下の日が更に数日以上続き、氷の厚さが10cm程度まで成長しなければなりません。翌1月28日土曜日の最低気温は−4℃でしたが、29日日曜は−9℃、30日月曜−11℃、31火曜−9℃と続き、湖面の氷も徐々に厚さを増してきました。もっとも御神渡り発生の条件は最低気温だけでは無く、日中の気温や天候、また強い風や降雪が無いことも条件となります。そして大音響と同時に湖面の氷が割れても、そこに出来た氷の筋が成長し、御神渡りを司る八剱神社の宮司によって正式に「認定」されなければ御神渡りとは呼ばれません。

 そ
して最大の関門は、もし御神渡りが発生してもその日が仕事なら見に行けないということ。地元の方ならともかく、私のように東京から遠征する立場としてはこればかりはどうにもならないです。勤務シフトによると次の休日は2月5日日曜日だけ。この週末に御神渡りの兆候が見られ、更に気象条件に恵まれ氷の筋が成長し、遅くとも日曜日の朝には正式な御神渡りと認定されないと間に合わないのです。2月も半ばを過ぎれば逆に日照時間が長くなり、御神渡り出現の可能性もぐっと低くなってしまいます。

 これはもう週末ワンチャン!そしてそれは決して私だけでは無いはず。全国の東方風神録クラスタが固唾を飲んで見守る御神渡り。今年こそこの体で幾度と無く味わった、あの「神が歩かれた御神渡り」をこの目で見たい。そしてその眼差しは諏訪湖の氷を溶かしてしまう程に熱い!(って、溶けたらダメじゃん・・・ 

 
 そして迎えた運命の2月3日金曜日、この日諏訪市の最低気温は−13℃を記録し、この冬一番の冷え込みとなった。


 そしてその刹那、大音響とともに海が、割れた。






四年ぶりに出現した「神様が通った跡」

その奇跡を余すことなく紹介します。


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